ボーカルミックスで「なんだかトラックに埋もれる」「太さも抜けも出ない」と悩む人は多いはず。そんな悩みをフェーダー数本で解決してくれると話題なのが、Wavesの JJP Vocals です。この記事では、機能の仕組みから使い方・おすすめ設定、価格やセール、注意点までをまとめてレビューします。

目次
JJP Vocalsとは?グラミー受賞エンジニアのシグネチャープラグイン
JJP Vocals は、U2、レディ・ガガ、ジョン・メイヤー、ローリング・ストーンズなどを手がけ、グラミー賞を複数回受賞したエンジニア Jack Joseph Puig(ジャック・ジョセフ・プイグ)のボーカル処理ノウハウを詰め込んだプラグインです。コンプ、EQ、ディエッサー、リバーブ、ディレイといった処理があらかじめ最適化された状態でまとまっており、ひとつ挿すだけでプロのボーカルサウンドに近づけます。
対応フォーマットは AAX Native / Audio Units / VST3 で、Logic・Cubase・Studio One・FL Studio・Pro Tools など主要DAWで使用できます。
最大の特徴:6つのフェーダーによる「パラレル処理」

JJP Vocals の心臓部は、原音を含む6系統を並列にブレンドするパラレル処理です。本来なら6トラック分の複雑なチェインが必要な処理を、1プラグインで完結させています。各フェーダーの役割はおおよそ次の通りです。
- MAIN:原音。ここを基準に他を足していくと迷いません。
- MAGIC:高域ブースト+リバーブ系。抜けと存在感が出ます。
- SPACE:ディレイ+リバーブ系。残響・奥行きを付加。
- ATTACK:アタック成分を強調し、輪郭を立てます。
- ATTITUDE:低域を足して太さ・ボトムを形成。
- PRSNCE:ザラつきのあるパンチある高域を付加。
MAIN以外はコンプがかかっており、いわゆる“ニューヨーク・コンプレッション”を形成します。これが洋楽ヒットのような「太いのに抜ける」ボーカルの秘密です。
使い方(クイックスタート)

- 画面下部の Male / Male 2 / Female から声質に合うモードを選ぶ
- SENS で入力レベルを調整(LEDが黄色に点灯する程度が目安)
- メインセクション(LOWS / HIGHS / DE-ESSER / COMP)でざっくり音色を作る
- 6つのフェーダーをブレンドして仕上げる
スレッショルドやレシオといった難しい設定が不要で、直感的に操作できるのが魅力です。
おすすめ設定のコツ
派手に仕上げたいときは各フェーダーを積極的に、ナチュラルに使いたいときは MAIN + ATTITUDE を少しだけ足す“隠し味”運用が効果的です。抑揚を残したいときは SENS 低め、しっかり潰したいときは SENS 高めが基本の考え方になります。
歌ってみた・ボーカルミックスでの活用
存在感のあるボーカルが好まれる日本の楽曲・歌ってみた制作とも相性が良く、EQで整えた後段に挿して質感を作る使い方が定番です。ただし「挿すだけで音圧が上がる魔法の道具」ではないため、音量バランスやマスタリングは別途行う前提で捉えるのが失敗しないコツです。
気になる点・注意点(使えない/ノイズと言われる理由)
デフォルトはかかりが強めなので、そのまま使うと過剰に感じることがあります。「使えない」という声の多くは、フェーダーを盛りすぎているケース。まずMAIN基準で少しずつ足すと扱いやすくなります。元素材にノイズがある場合はJJP Vocals単体では除去できないため、ノイズ処理は専用プラグインとの併用が必要です。
価格・セール情報
永続ライセンス版は通常17,380円のところ、セール時は6,160円(記事作成時点で65%OFF)と手を出しやすい価格帯。Wavesは頻繁にセールを行うため、単体購入かバンドル(Signature Series Vocals 等)購入かを比較するのがおすすめです。購入前に7日間の無料デモで動作確認できます。
※価格・セール率は変動します。最新の金額は必ず公式ストアでご確認ください。
プロが実践する正しい使い方:全フェーダーを「0」から作る

プリセットやデフォルトのまま使うとコンプが強くかかり、エッジが立ちすぎたサウンドになりがちです。プロの現場でも推奨されるのは、まず全フェーダーを0にした状態を起点にする方法です。このゼロ状態をユーザープリセットとして保存しておくと、毎回同じスタート地点から音作りを始められます。
具体的な手順は次の通りです。
- Male / Male 2 / Female で声質に合うモードを選び、SENSで入力を適正化(LEDが黄色)
- メインセクション(EQ→ディエッサー→コンプ)で土台となる音を作る
- MAINを基準に、必要なフェーダーを少しずつ足していく
- 仕上げの空間系は、SPACEだけでなく手持ちのリバーブ・ディレイを併用してもOK
プリセットを微調整するより、ゼロから組み上げた方が結局早く、狙い通りの音に近づくことが多いです。
各フェーダーの役割をもう一歩深く理解する

各フェーダーはコンプ・EQ・サチュレーションなどを組み合わせた複合的な処理になっており、マニュアルにも明確な記載はありません。実際の音と解析から読み取れる傾向を整理すると、おおよそ次のようなイメージです。
- MAIN:メインセクション(EQ・ディエッサー・コンプ)を通した基本の音。ここを土台にする。
- MAGIC:超高域を持ち上げ、一気に抜ける音に。ミックスで埋もれを防ぐ主力。
- SPACE:リバーブ・ディレイなどの空間系。残響と奥行きを付加。
- ATTACK:出だしが強調されたコンプ感のあるサウンド。語頭の立ち上がりをハッキリさせる。
- ATTITUDE:低域を支えるフェーダー。どっしりとしたボトムと太さを作る。
- PRSNCE:4kHz付近を強調し、パンチと存在感を与える。シルキーというよりザラっとした質感。
特に MAGIC は一瞬で抜けを作れる便利なフェーダーですが、高域が強まると歯擦音(サ行)が目立ちやすいため、後段でディエッサーを足すと扱いやすくなります。
ジャンル・声質別の音作り例
実際にプロが使った例を参考に、代表的な使い分けを紹介します。
- ロック/女性ボーカル:FEMALEモードで芯のある押し出しの強い音に。ドライに感じたらSPACEで馴染ませ、最後に好みのリバーブで仕上げる。
- 音数の多いアレンジ:ATTITUDEで低域を支えつつ、MAGICで抜けを作ってオーケストラの中でもボーカルを際立たせる。
- バラード/アコースティック:フェーダーは控えめにし、MAIN中心で自然さを残す。SENSを低めにして抑揚を残す。
- 歌ってみた:EQで下処理した後段に挿して質感を作り、必要に応じて後段にディエッサーやコンプを追加する。
他のボーカルプラグインとの比較・立ち位置
JJP VocalsはWavesの「Signature Series Vocals」の一つで、名エンジニアの手法をワンタッチに落とし込んだシリーズです。代表的なボーカル向けプラグインとのキャラクターの違いを整理しました。
| プラグイン | キャラクター・向いている用途 |
| JJP Vocals | エッジが立ち、抜けのよい音。音数の多いアレンジで際立たせたいときに。 |
| CLA Vocals | 汎用性が高く懐が広い。バラードからロックまで幅広く対応。 |
| Butch Vig Vocals | 強力なサチュレーションで密度の高い音に。空間系はなし。 |
| Maserati VX1 | ローエンドがスッキリし、色気のある声質に。モダンで抜ける音。 |
| Greg Wells VoiceCentric | ワンノブでダイナミクスを整える最小限操作。声質調整は外部EQ併用が前提。 |
| Eddie Kramer Vocal Channel | 重心が下がり、アナログ感のある温かいサウンド。クラシックロック向き。 |
メリット・デメリット
導入前に知っておきたい良い点と注意点を整理しました。
- メリット:難しい設定なしでプロ品質のボーカルに近づける。抜けと太さを両立できる。セール時は価格が安い。
- メリット:パラレル処理で複雑なチェインを1つに集約でき、作業が早い。
- デメリット:クセが強く、デフォルトのままだと盛りすぎて破綻しやすい。
- デメリット:各フェーダーの中身がマニュアルに明記されておらず、意味を把握しにくい。
- デメリット:単体ではノイズ除去やピッチ補正はできない。
向いている人・向いていない人
- 向いている人:歌ってみたやボーカルミックスの初心者〜中級者。抜けと太さを手早く作りたい人。
- 向いている人:音数の多いアレンジでボーカルを前に出したい人。
- 向いていない人:周波数を細かく自分で詰めたい人や、ナチュラルで控えめの質感を求める人。
よくある質問(FAQ)
「使えない」と言われるのはなぜ?
多くはフェーダーの上げすぎが原因です。デフォルトはかかりが強めなので、全フェーダーを0にしてMAIN基準で少しずつ足すと自然に仕上がります。
ノイズが気になるときは?
JJP Vocalsはノイズ除去プラグインではないため、元素材のノイズは専用プラグインで先に処理しましょう。高域を強調するMAGICを上げると歯擦音が目立ちやすいため、後段のディエッサーも有効です。
無料で使える?代用できるプラグインは?
有償プラグインですが、7日間の無料デモで全機能を試せます。類似の方向性の選択肢としては、同じSignature SeriesのCLA VocalsやMaserati VX1などがあげられます。
セールはいつ?いくらで買える?
Wavesは年を通じて頻繁にセールを行い、単体はセール時に6,160円前後まで下がることがあります。急がなければセールを待つのがおすすめです。最新価格は公式ストアでご確認ください。
さらに使いこなす実践Tips
公式の日本語PDFマニュアルには各フェーダーの考え方や推奨の操作順が記載されているため、一度目を通すと理解が深まります。また、JJP Vocalsである程度の音を作ったら、前後に手持ちのEQ・コンプ・サチュレーターを足して多段で仕上げると、より思い通りの音に近づけられます。
まとめ|こんな人におすすめ
「抜けの良さと太さを両立したい」「難しい設定なしでプロっぽいボーカルにしたい」人に最適な1本です。特にボーカル/歌ってみたミックスの初心者から中級者にとって、学習コストの低さと仕上がりのバランスが優秀です。
